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8月31日、ある晴れた日に。
9月からまた改装に入る、埼玉県立近代美術館に行ってきた。

「戦後日本住宅伝説—挑発する家・内省する家」
という企画展は、その題材のユニークさから、Twitterでも評判がかなり良く気になっていた。

また、春にピカソの展示を見に行っていたので、同じ展示室で建築の展示をどのように行うか興味があった。

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最終日ともあって、美術館はかなり混雑していた。やはり、閉館前日だからなのか。
地方の美術館では、土日でも閑散としていることもある中でこの集客は凄い。


さて、改めてこの企画展では『戦後の都市化が急速に進んでいく中で、人間の私的な居場所である住空間に、個々の建築家はそれぞれ内なる眼差しをどのように注ぎ、芸術性をも視野に入れながら、どのような解答を引き出したのか』を掘り下げていく。
昭和の個人住宅を題材にしているということは、多くは一般公開されていない。また、既に解体されており現況確認すら出来ないものもある。
そもそも、作品自体美術館に持って来ることが出来ない。その場に無いものを、どう情報を組み合わせて作品としてリアリティをもたせるか?
その点が非常に興味があった。

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展示は丹下健三の「住居」(1953年)からはじまり、伊東豊雄の「中野本町の家」(1976年)、安藤忠雄の「住吉の長屋」(1976年)まで、全部で16人の建築家、16の住宅を紹介している。

外観を確認できる写真1点、建築模型1点、タイトルとキャプション、解説パネルがそれぞれ展示されていた。
また、非常に特徴的だったのが、幅約3m、高さ約2.5m程度の巨大スクリーンに引き伸ばされた内観の写真である。
これだけ撮影可能だった。
例えば丹下先生の(教わった事は無いけど先生とお呼びしたいよね…呼び捨てできない)『住居』は、縁側の写真だったのだが、目線の高さが丁度実寸に近い形で、そのまま画面の中を歩いて木の質感を素足で楽しみたくなるような気持ちになった。

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また、今回の展示で『これは!』と思ってしまったのは、この写真の東孝光自身の自宅である『塔の家』の展示。
この物件は今も外苑前にほど近い外苑西通り近くにあるので、ぜひ見にいきたいのだが、狭小住宅の先駆けとして伝説の家。
内部は中心に階段があり、空間をうまく分けている。その圧迫感を感じさせない間取りは模型ではなかなか掴めないが、今回の展示では同じ寸法にカットされた間取りが引き伸ばされた状態でシートとして床にひかれており、鑑賞者が実際に寸法を体感することができる。正面に外観の無機質なコンクリート建築の写真を置くことで、その場に来たような気分になった。

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黒川紀章の作品もあった。彼がこの埼玉県立近代美術館の設計を手掛けているのだが、この美術館の正面のグリッド感が高校生のころたまらなく好きで、用もないのによく来ていたことを思い出した。

今回の展示作品は初期の代表作であり、非常にユニークな建築物として有名な『中銀カプセルタワービル』。それぞれを2.3m×3.8m×2.1mの住居カプセルに納め、2本の鉄筋鉄骨コンクリシャフトにボルト接続させている、独立性の高い物件。メタボリズム建築の代表作とされている。
アスベストによる健康被害の懸念など、この物件にかんしては色々といわくがついてしまったが、今でも居住物件として機能している。

最近デイリーポータルZでも取り上げられていたし、ご存知の人も多いと思う。
展示では黒川紀章のインタビューから、実際にシャフトに取り付ける瞬間などのVTRが流されていて、熱心に見ている人が多かった。

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他にも面白い建築作品が展示されていたが、最後の別室に展示された白井晟一の『虚白庵』、伊東豊雄の『中野本町の家』は対照的な作品ではあるが、どちらも閉鎖空間のような内部構造が非常に印象に残った。外観=社会との共存、内観=個人または家族など共同体のルールで構成された独立した世界…ということを強く意識させられた。

鑑賞者は家族連れから建築関係の仕事をしていそうな男性、学生など幅広い世代がきていたが、どの人も熱心に見ていた。

今回、都内の美術館と比べて天井も高くなく、広さもとても広いとはいえない敷地面積で、どうやって展示するのかがとても興味があったけど、行って見たら狭さは全く感じないし、圧迫感もなく、非常に見やすかった。

16作品を1人の建築家ずつ区画をくぎって展示することにより、作品に集中できるし、まるで有名建築家の住宅展示場に来ているようでとても楽しかった。

東京では八王子で開催される予定なので、興味のある方はぜひ。私ももう一度見に行きたいと思います。